第11章 月夜の華炎③【セイヤ】R18
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『──やっと2人きりになれたね』
レイが去りホムラも去った病室で アリスはそんなお決まりの台詞を口にして笑った。セイヤは軽くアリスの唇にキスを落とすと、柔らかく微笑み アリスをソファへと誘導した。
『まさか──…
あなたまたソファで寝ちするつもりじゃないでしょうね』
「それはない。
ただ…今は2人の時間が貴重だから、ここでくっついていたいと思っただけだ
あんたがベッドにいたら、それが出来ないだろう?」
そう言ったセイヤがソファの端に腰を下ろすと、薄手のブランケットを手にポンポンと自分の膝を叩いてみせる。
『……膝枕してくれるの?』
「ああ、あんたは横になっていた方がいい。
身体の負担になるからな──…ほら」
アリスは目を丸くする。だがおずおずとセイヤの膝枕でブランケットにくるまって、部屋に備え付けのモニターで先日の事件に関する報道番組を観ることにした。何故なら丁度 "月影ハンター" の特番なるものが組まれていたからだ。アリスがそれを観てはしゃいでいるとセイヤが照れたように頭を掻く。
モニターに夢中になっているアリスをただ穏やかに見下ろしていたセイヤだが、ふと先程ホムラが持って来た画集に目が留まり、それを手に取った。
それ程分厚い物ではない──今回の彼の個展の絵が 全て収められた小さな冊子だった。何気なくページをめくってゆけば 色鮮やかな絵の数々がセイヤの目に鮮烈に焼き付いてゆく。
『…ホムラの画集?』
「ああ、俺には芸術は分からない、だが……
彼の絵には確かに
人を惹きつける 魅力があるな」
『…うん』
確か花火とコラボすると言っていた。成る程 夏の色合いと花火の色鮮やかさがこの画集にはピッタリだ。セイヤはその時 一際大きくページを使い載せられていた一枚の絵が この本の表紙になっていることに気が付いた。
"熱情" と題されたその絵の本質は勿論、セイヤには分からない。だが確かに内に熱を秘めたようなその抽象的な色合いに、ホムラのアリスへの切ない想いが込められている気がして、セイヤは少しの戸惑いを覚えた。