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深空の幻【恋と深空】

第11章 月夜の華炎③【セイヤ】R18






レイが包帯を巻き終え扉を開けると、そこには待ち侘びた様子のセイヤとホムラが立っていた。


実の所彼は随分と前から2人の気配に気が付いていた。


がアリスの処置に集中していた手前、敢えてその事には触れなかった、というだけだ。恐らくは彼女も同様 外の気配には気が付いていただろう。



『2人共、入って!』



レイと目が合うと、誠実そうなアリスの恋人──セイヤはこれまで同様 レイに軽い会釈を返してくる。が対するもう1人の男──最近アリスの元に足繁く通って来る新たな訪問者──は判然としない表情を浮かべ、すれ違い様 彼に挑戦的な目を向けてきた。


その分かりやすい態度にレイは少々眉根を寄せる。



「やあ、ボディガードさん
どうやら昨日より顔色が良いね」


『そう? ありがとう、ホムラ』



恐らくはこの男──ホムラはアリスに 特別な感情を抱いているのだろう。彼はあのイベントの日、恋人に代わってアリスを守り あの燦然とした現場から彼女を避難させた張本人らしい。


だがアリスの恋人でもない彼が どういう訳か初対面だったあの日から レイを敵対視しているようだ。



「ああ、レイ先生のお陰だな」



セイヤがアリスに歩み寄る。レイはその様子を穏やかな気持ちで眺めていた。自分を警戒して一体何になる──…それがホムラに対する レイの正直な感想だった。



『ふふ』



優しく笑んだセイヤに触れられ、アリスが嬉しそうに破顔する。照れた様にその頬を薔薇色に染めるアリスを見て レイは何度でも痛感する──恐らくはホムラもこの先 2人を前に都度 痛感するのだろう、自分同様に…


目の前の男に瞬間同調したレイは そっと瞼を伏せた。


ホムラだけでない レイもまた、彼女にとっては未来永劫…ただの友人以上には なり得ないのだ。悲しいかな──…アリスの目には、この穏やかな青年以外 誰も映っていない。


レイは小さく微笑み自嘲した様に嘆息すると、そっとその場から背を向けたのだった。




『レイ先生!
──…ありがとう、またね」



「……ああ、また午後の回診でな」




(幸せに笑うあの笑顔を、ただ守れればいい。
私にはそれで充分だ──…)




────…


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