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深空の幻【恋と深空】

第11章 月夜の華炎③【セイヤ】R18






「ちょっと、そんな目で見ないでよ」



ホムラがわざとらしく少し戯けて肩を竦めた。



「彼女を狙う男をただ警戒しているだけだ」



辛辣にそう言い放ったセイヤの言葉は
だがホムラにはほぼ響いてないらしい。



「ふ〜ん…
彼女を狙う男、ねぇ

じゃあ君──…

僕にだけ危機感を抱くのは
ちょっと違うんじゃないのかな?」



そう言って扉に少しの隙間を作り、
ホムラはまるでコソ泥の様にその隙間から病室を覗いてみせる。



「…どういう意味だ」



セイヤが訝しげに顔を顰めると
ホムラは忌々しげに声を潜めた。



「はぁ……
そのままの意味さ

あの主治医の彼


────…レイって言ったっけ?

彼間違いなく、アリスの事
ただの患者とは思ってないよね?

恋人だって言うのなら
君ももっと僕以外に
警戒の目を向けるべきだよ」



その言葉にセイヤは分かりやすく眉根を寄せる。


そんな事言われるまでもない。近しい様子の2人の姿はこれまで幾度となく見せ付けられてきた。セイヤにとって、レイは確かに危機感を持つべき相手だ──…ホムラ同様に…


それは間違いではない。


だがアリスにとってレイは昔馴染みであり、家族とも交流のある まるで兄のように近しい存在らしい。故にアリス自身があの医者を友人として必要とする以上、くだらない嫉妬で 彼女の意志そのものまでを束縛するつもりはない──…それがセイヤの考えだ。


それは、このホムラにも同様の事が言える。


勿論達観している訳ではない──実際今の様に上手く振る舞えない事の方が多いのだから。


だが長く生きてきたセイヤにとって それはごく自然な彼女への配慮だった。



「────ほらあれ…
なんで医者の癖に包帯まで巻いてあげてるの?

は…っ、アリスってば…
あんなに彼に──肌を晒して」



「おい」



その言葉にセイヤがピシャリと扉を締める。


すると両手を上げて降参のポーズをとったホムラは 不貞腐れたように唇を尖らせた。



「だって──…
そこは同性の看護師にやらせるべきだ──って、


君だってそう思うでしょ?」



「……はぁ……
頭痛がしてきた」




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