第11章 月夜の華炎③【セイヤ】R18
『…っ』
「────いいだろう、
縫合箇所も順調に回復している。
引き続き安静にしていろ」
アリスがAkso病院に入院してから、今日で早12日目だ。
彼女の全身の傷を全て消毒し終えたレイは医師の顔で包帯を撒き直していく。
包帯が肌を掠める感触にアリスは少々顔を赤らめていた。
主治医である為、彼に肌を晒す事はこれまでにもあった。だが大抵は意識を無くしている時なので こうしてはっきり意識のある中 際どい部分を手当されることに彼女はまだ慣れていない。
『ねえレイ先生
──…私、来週には退院出来るかな?』
アリスの言葉に、無言で包帯を巻いていたレイは大きく溜息を吐いた。
花火大会でのイベントはあの事態によって残念ながら中止となった。だが実は来週臨時の日程を儲ける事で 花火だけでもと沿岸部で打ち上げる事が決定したらしい。アリスは伺うような視線をレイへと向ける。
「さあな、
それは患者が大人しく傷の回復に専念するかにもよる」
『うん…っ、専念するよ!』
新人ハンターの歓迎会はなくなってしまった。だがこうなった今、ならば当初のセイヤの希望通り 彼と2人で夏の思い出を作りに行きたい。そう強く願ったアリスはふんすと鼻息を荒くして1人 来週までの安静を硬く心に誓うのだった。
────…
「あんた──…また来ていたのか?」
セイヤがAkso病院を訪れると、アリスの病室前で壁にもたれて立っている1人の男の姿が目に入った。
「やあ、また会ったね
───伝説のハンターさん」
「………その呼び方はやめてくれ」
「ああ、ごめんごめん、
確かこの事は、世間ではまだ 秘め事…なんだっけ?
でも、ダイミングが悪かったね
どうやらアリスは今 診察中みたいだよ」
「はぁ……」
飄々としたこの態度にももう慣れてしまった。それ程にこの男───ホムラは ほぼ毎日…と言っても良い程頻繁に この病室に訪れる。セイヤにとっては至極迷惑な話だ。