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深空の幻【恋と深空】

第2章 我儘な独占欲【ホムラ】






切実な彼の懇願には毎度心を動かされる。アリスにとっても、トウに同情心がないわけでは無い。現にホムラと恋人になる前には協力することもあった。トウはホムラの親友でFluxギャラリーのオーナーだ。彼はホムラの展覧会やビジネスのオファーの事で日々頭を悩ませている。


だが今はアリスもホムラの恋人として、彼の意思を尊重するという方向性を決めていた。だからその場で握らされた彼の連絡先にはその後断る旨を送信しただけ。


ただそのやり取りは思いの外長期に渡り、気付けば説得する側とされる側……両者で毎朝毎夕、任務の合間、ひいては深夜に至るまでメールのやり取りをする羽目になった───と言うだけ。




────…




「僕はアーティストであってタレントじゃない。

個展や展覧会ならまだしも、ただ顔を売るだけみたいなイベントには全く興味がないんだ」



ホムラが唇を尖らせている。



『……分かってる』



アリスは彼のそのむくれる姿が可愛くて思わず笑ってしまいそうになった。がそれを何とか押し留める。個展や展覧会ならまだしも‥とホムラは言っているが、実際はそれすら彼はトウに協力的ではない。トウの苦労にはやはりアリスは少なからず同情してしまう。


企業としても人気アーティストであるホムラは存在感のあるゲストだ。恋人としての贔屓目がなくとも眉目秀麗な彼は女性から絶大な人気がある。



「そもそも個人的に連絡先を教えた上に
やり取りが多過ぎる。君は…」
『それは……
トウさんもきっと今回は必死だったのよ。

スポンサー企業なんだから、貴方も少しは大人になってたまには彼の苦労に寄り添ってあげたら?』



「!…………」






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