第2章 我儘な独占欲【ホムラ】
「君、最近トウと…
個人的に連絡を取り合ってるんだって?」
何やら不穏な恋人の声に、アリスはひりっと表情を強張らせた。
(……なんで知ってるんだろう)
素朴な疑問が浮かび上がるも直ぐ
アリスはその場を切り抜けようと惚ける作戦に出た。
『トウさん?
………な、なんの事かなぁ』
「惚けてもムダだよ
ネタは上がってるんだ」
だが直ぐに被せる様な反論に合い閉口する
端からホムラとやり合おうなどとは思っていない。彼女はただ純粋にその場での口論を避けたかっただけだ。
『ホムラ落ち着いて
私はただトウさんに…』
「ああ分かってる
君には失望したよ。
どうせまたトウと手を組んで
コソコソと僕をあの来月のイベントにでも
連れて行く算段をしてたんだろう?」
『違…』
「と言うかいつの間に君達は僕を飛び越えて
そんなに懇意になったのかな?
トウの履歴に君の名がズラリと並んでるのを見た時は───はぁ…眩暈がしたよ」
彼の大袈裟な物言いに
アリスはため息と共に頭を抱えるのだった。
────…
1週間前
大手企業主催のイベントに某有名人達と肩を並べて新鋭アーティストであるホムラに白羽の矢がたった、と言う一大ニュースをトウが意気揚々とアリスに伝えに来た。
────彼女の自宅まで。
なぜわざわざ彼が自宅にまで訪れてこれを伝えに来たのか、最早彼女は察するまでもなかった。成る程たしかにホムラにもすぐにバレるのは必然だったろう。トウはホムラを絆す手段として 毎度芸もなく、アリスに頼るのだから。
今回もアリスは
彼のイベントへの参加の後押しを懇願されたのだ。
「君しかアイツを説得出来る人間がいないんだ、頼むよ」