第10章 月夜の華炎②【セイヤ】
『───ホムラ、ごめんね
私、あなたの気持ちに これまで、ずっと気付かなかった──…
もしかして──…
これまで沢山あなたの事を……
その……傷付けて、しまっていた?』
唐突なアリスの言葉にホムラは思わず目を見開く。が、その時彼は 弱っている彼女を前に いつもの様に変な意地を張る気にはなれなかった。半ば諦めた様に 真っ直ぐにアリスと向き合う。
「自惚れないで──…
と言いたいところだけどね
……分かった───…白状するよ
そうさ──…
僕は君を愛している
……心からね、アリス」
ホムラがそう言うと、アリスは薄らと頬を赤く染めた。そんな顔をされると、ありもしない期待がホムラの胸中を横切ってしまう。
『そっか────…
うん──…あなたの気持ち、すごく嬉しい
────でも……
…ごめん…ね、ホムラ…』
だがホムラはやはり告げられた予想通りのその言葉に やり切れない思いで奥歯を噛み締めた。
「やめてよ、謝らないで。
この告白が僕にとって
最悪のタイミングだって事くらい分かってるよ、
でも────…っ
僕はどうしても
君をこんな場所に置き去りにしたあの男に
君を託す気にはなれないんだ」
だがアリスはそんなホムラに向かってゆっくりと首を振り笑顔を作る。
『ううん
それは違うんだよ、ホムラ
セイヤはただ
私との約束を果たしてくれただけ』
「?
───約束だって?」
『うん』
その時首を傾げるホムラの背後に人の気配が現れる。
『ワンダラーが現れたら
真っ先に戦闘に向かってくれるって約束
だよね、セイヤ
……守ってくれて、ありがとう』
「ああ、
ちゃんと片付けて来た。
遅くなってすまない
──…アリー」