第10章 月夜の華炎②【セイヤ】
(しまっ…た…)
『───く……っ、
大丈夫よ!!こいつに後は追わせないから!
2人共、走って──────っ!!
………早く──っ!!!』
アリスのその怒号により
母娘はやっとハッとして、その後堰を切ったようにその場から駆け出してゆく。
だがその姿に安堵したアリスの意識がゆらりと霞んでいった。
目の前の敵にとどめを刺さなきゃ……
…そう思うのに────…
「アリー────ッ!!!」
「アリス────ッ!!!」
その時それに気付いたセイヤと 漸く現場に駆け付けアリスを見つけたホムラが2人──……同時に鋭い攻撃で両脇からワンダラーを仕留めたのだった。
だが仕留めた次の刹那 アリスに駆け寄った彼等の背後で突然の大爆発が起こる。 セイヤは爆風に煽られる中アリスを懐の中に庇いつつ直ぐに次に来る事態に警戒した。
直後 辺り一体がパッと暗がりに包まれてしまう。この付近の電気系統がやられたのだろう。日が落ちかけていた周辺は 途端に迫り来る闇と、ワンダラーに襲われるかも知れない…という二重の恐怖に襲われることになった。
───周囲の人々はまた新たな大混乱へと陥ってしまう。
「あんた…っ、
確か ホムラ───…だったか?
すまないが、暫く彼女を頼んでも良いか?」
セイヤは徐に立ち上がると、恐らくは恋敵であろう人物を上から見下ろしてそう言った。
「君に頼まれるまでもなく、僕はこんなに弱っている彼女を放って この場を後にしたりはしないよ」
ホムラも勝ち気な瞳で無意識からか、下からセイヤを睨め付ける。