第10章 月夜の華炎②【セイヤ】
「はぁ───もう…分かってるよ」
アリスは溜め息と共に銃をホルダーに収めると片手剣を発動させ、泣く泣く一体ずつ確実にワンダラーをしとめていく路線へと戦闘スタイルを変更したのだった。
────…
ガシャーーーーーン!!!!!!!
一方 アリスと別れたばかりのホムラの背後で唐突にモール内のガラスが割れる豪快な音が轟いていた その時───…彼は隣に並ぶトウと背後を振り仰ぎ、瞬く間に騒然となった辺りの喧騒に 呆然と目を見開いていた。
だが咄嗟に冷静な空気を身に纏ったホムラは、異常な磁場の乱れを感じ取る。そして先程別れたばかりの想い人の安否をいち早く気に掛けたのだった。そう考えた時にはもう時すでに遅く…必死で止める親友の声も虚しく ホムラは再びアリスの元へ…─── 一も二もなく走り出していた。
────……
ビルから降り注ぐガラスの破片を両手でかわし、視線を上げたアリスの目の前に幼児を連れた若い母親の姿が飛び込んで来る。襲い来るワンダラーになす術もなくガタガタと震えて動けずにいる2人を見て、彼女は先程持ち替えたばかりの剣に向かって小さく舌打ちをしていた。
(───くそ、間合いが広過ぎて
…これじゃ、間に合わない────…!)
咄嗟に銃を抜こうかとも迷うが そう思った時には既に一か八かと反射的に剣を盾に親子の前へと飛び出してゆく。思いの外重い攻撃を両手で受けるも、バランスを崩した彼女に放たれた攻撃にだが一瞬 気押されてしまった。
パッと瞬間 かまいたちのような無数の裂傷がアリスの身体中を掠め 辺りに彼女の血飛沫がまるで真っ赤な鮮血の花火のように舞い散っていった。