第10章 月夜の華炎②【セイヤ】
最近の穏やかな磁場の安定は何かの前触れだったのか───…そう思える程の光景が外へ駆け出た2人の目の前に飛び込んで来た。ショッピングモール前の巨大なスクランブル交差点のど真ん中で巨大な磁場の裂け目ができているのが嫌でも目に留まる。
そこからまるで悪夢のように無数のワンダラーが 沸き出るように出現していた。
攻撃を仕掛けようにも大勢の人がいる中で 無闇に銃を振るうことも出来ず アリスは両手に装備したラビットハント700の銃口を口惜しげに足元へと下ろした。
────ジジ…
その時腕にはめているハンター探査器が赤い光を放ち 緊迫したミナミの声を伝える。
「臨空市沿岸ショッピングモール付近にて特異エネルギーの波動を感知。付近のハンターは至急現場へ向かって対処、応戦せよ!」
それを聞いたアリスが直ぐに探査器に応答した。
「ミナミさん 私達今 現場付近にいます!
ショッピングモール正面 スクランブル交差点の中央に磁場の裂け目が出来ていて…っ、そこからワンダラーが無数に発現しています!」
「───了解。
取り敢えず周囲の人々の避難誘導を最優先に。
たった今緊急医療チームを要請した。怪我人は海側のテントへ向かうよう指示を出すわ。 すぐに応援が向かうはずよ」
その簡易なやり取りを同じく自身の探知器で聞いていただろうセイヤが 飛び散るガラスからevolで人々を守りつつ、テキパキと避難誘導の指示を出してゆく。その甲斐もあってか、暫くすると建物の少ない海側へと人々は自然に足を向け始めた。
『────セイヤ!!
とにかくあの磁場の裂け目をなんとかしなきゃ!』
「分かってる。
だが今はまだ人が多過ぎる
応援を待って、まずは避難誘導を優先しよう!
アリス、くれぐれもここで飛び道具は使うなよ!」