第9章 月夜の華炎①【セイヤ】
どうにか顔を見ようと試みるも、何度やっても上手く交わされ、アリスはどうしてもその表情を見ることが出来ない。その内ホムラは大きく手を振り彼女を遮ったのだった。
「わ 分かったよ!
個展は今日限りって訳じゃないからね。
僕は期間中───君が来てくれるのを、首を長くして待つ事にするよ、だから……っ、
………もういいだろう!?」
『え、良くない!
────だってあなたがそんな顔するから
「───…でも1つだけ──…
……………………お願いだから
くれぐれも誤解しないで………っ
……僕が決して──────
"君自身" を……
諦めたわけじゃないんだって事を ね 」
『──…え……
──────……ホム、ラ…?
………それって──…
……………???…………』
「じ、じゃあ────僕はもう行くよ
………行こうトウ!
────…またね、 " ボディガード" さん
……………せいぜい 今夜の花火を楽しんで 」
最後にそう言ったホムラは、アリスに頑なに背を向けたまま 挨拶もそこそこにその場を去ってしまうのだった。
『あ────…ホムラ!』
そして半ばホムラに引き摺られるようにしてトウもまたその場を後にしてしまう。焦ったように後ろ手に手を振るトウを見つめながら アリスは呆然とその場に立ち尽くしてしまった。