第9章 月夜の華炎①【セイヤ】
『──…?
あ そうか!
今回のあなたの個展は
確かこのモールの最上階が会場だったね!
もしかして、今日が初日?』
「ああ たった今も気を緩めれば直ぐに
脱走するホムラをこうしてそこで捕まえたところさ」
トウの言葉にホムラが煩わしそうに目を逸らしている。
「……君、
僕の聞き間違いじゃなければ今
"確か" とか "もしかして" とか言った?
君にはこれまで散々話したつもりだったのに───…まさか 忘れていたのかい?」
『え?!
────い いや、まさか。
えぇっと……た 確か今夜の花火と
立体スクリーンに映し出される貴方の作品が
会場でコラボするんだよね。
うん、も 勿論ちゃんと覚えているよ。
出来れば参加したいって思っていたし
そうかぁ、さ さぞかし幻想的なんだろうなぁ!あはは…』
忘れていた事に図星を刺され おどおどしながらアリスがそう答えると、ホムラは疑わし気に腕を組んだ。そう言えば 個展とコラボする今回のイベントに "君も顔を出さないか" と彼から声を掛けられていた気がする──とその事を唐突に思い出したのだ。
「…また "確か" って言ったね
………はぁ──…まあいいや。
君が本当にそう思ってくれているなら、今からでも僕の個展に参加してくれていいんだよ。
こうして偶然ここでも会えた事だし
先週メッセージでも送った通り、
君の席はまだ ちゃんと確保してあるんだからね
────…まぁ、返信はなかったけど…」
『え!そうなの?
────ご、ごめん!
メッセージ、見れてなかったかも…』
「アリー、知り合いか?」