第9章 月夜の華炎①【セイヤ】
アリスは先ほどの一連の流れを思い出したのか再び頬を染めている。セイヤは背伸びをして彼女が手が届かないらしいお菓子の袋を背後から手に取ると 代わりにカゴに放り込んだ。その流れでその背中をふわりと抱き締め うなじに小さなキスを落とす。
「────…ダメだったか?」
『駄目っていうか。
……だってあんなの、
セイヤは普通に恥ずかしくないの?』
周りには人も多いがカップルも多い。故に彼らのそんな行動を気にする者は誰もおらず、2人は自然に身を寄せ合った。
「そうだな。
だが今はあんたも嫌がってない。
さっきと何か違いはあるのか?」
『え、
だって今は知り合いもいないし』
「なるほど、
じゃあ次からは知り合いがいるところでは我慢することにしよう。
──…それならいいか、ハニー ?」
『……っ
────もう!あなたがそんなだから』
アリスが睨むと唇にキスが降ってくる。
「悪かった。
俺はこういう事に慣れてないんだ。
つい思った通り行動してしまう。
───…だからちゃんとリードしてくれ
きっとあんたより俺の方が浮かれているから」
純粋な視線を向けられアリスは更に顔を赤くする。セイヤはそれを愛おしそうに見つめてから柔らかいその身体を腕に抱き締めた。