第9章 月夜の華炎①【セイヤ】
近場のショッピングモールの食品売り場でカートにメモされた物を一つずつ放り込みながらアリスはチラリと隣のセイヤを見上げた。
「ほら あんたの好きなサワーだ。飲むんだろう?」
『もちろん、酔っ払ったらあなたに解放してもらうつもりだよ』
「ああ その為に今夜はベテラン勢もいて あんたの隣には俺がいる。安心して楽しんでくれ、期待の新人ハンターさん」
少し茶化すようなセイヤの優しい言葉。壁一面がガラス張りになっていて、窓から少し傾きかけたオレンジの光が長く店内に差し込んでいる。その彩光が熱心に売り場を物色する端正な彼の横顔も浮かび上がらせていた。
この綺麗な顎のラインが好きだな とアリスはその横顔を見つめながら思った。
『……。
………ねえセイヤ───…
私 この頃 浮かれていると思う?』
「────?
……どうしたんだ、急に」
アリスの言葉にセイヤはキョトンとした表情になる。
『だってあんな風に人前で──…
なんてちょっと前の私だったら絶対に有り得ない行動だよ。あなたと付き合って、幸せで 私ちょっと浮かれちゃってるのかもしれない──…と思って』
アリスが彼と目を合わせるとセイヤはどこか嬉しそうに微笑んで見せた。
「そうか?
……だとしたら浮かれてるのは俺も同じだ」