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深空の幻【恋と深空】

第9章 月夜の華炎①【セイヤ】






セイヤはわざとなのか天然なのか、時折アリスを抗えなくさせる こんな一面を見せる。だがセイヤの真の思惑はどうであれ、彼女は既にそんな彼にがっちりと心を射抜かれてしまっているのだ。綿菓子の様な甘い言葉とコバルトブルーの澄んだ瞳に どうして逆らう事が出来るというのだろう。


一瞬の内に絆されたアリスはセイヤの胸に頬を寄せ、無意識の内小さく微笑んでしまう。そしてその体を抱きしめるように大きく腕を回した。


セイヤもセイヤで一通り冷やかし終えた同僚達が「やれやれ、もう勝手にやってくれ」などとぼやき買い出しに足を向ける声と足音に満足し、ゆっくりと瞳を閉じた。するとちょうどその時、背後からクスクスとミナミとモモコの小さな笑い声が聞こえてくる。セイヤは閉じかけていた視線をそちらに向けた。




「くすくす…あなた達いつの間に
そんな関係になっていたわけ?」



「え、ミナミさん知らなかったんですか?
この2人、もう既に有名カップルですよ」



「──…
付き合ってから…もう1ヶ月ほどか
……アリー?」



『────え?
………は!?』



「あら、それは良い時期ね。
それならこんなにラブラブなのにも頷けるわ」



「ふふ、ホント羨ましいなぁ〜

さ、私も買い出し行こ〜っと。じゃあね〜」




平然と応えるセイヤとハッと我に帰りこの状況に動揺を隠せずにいるアリス。したり顔で後ろ手に手を振り買い出しに向かったモモコの背後で、その2人の対照的な姿にミナミは遂に堪えきれず大きな声を上げ笑った。



「あはは、悪かったわね、
今日はカップルの為のイベントなのに。

でもベテラン勢もいるし、安心して楽しんで。
でも新人君達だけが特別に飲酒だって許可されてるんだから準備だけはちゃんと手伝いなさい!

それと、イチャつくのはワンダラーのいない時を選んで、ね? このところは磁場も安定している事だし、楽しめることを期待しましょう」




────……




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