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深空の幻【恋と深空】

第9章 月夜の華炎①【セイヤ】






『セイヤ、ほら行こう

横になりたいのは分かるけど
今度は買い出しに行かなきゃ

きっと夜には美味しいものが食べられて、花火を観ながらゆっくりだって出来るはずだよ』



だがアリスが希望的観測でそう声を掛けるも、セイヤは目を閉じたままかがみ込んで来た彼女の腕をくんと引っ張ってくる。その拍子にアリスは嫌な予感に包まれた。



『───きゃっ』



その予感通り思いがけず強く引かれた勢いのままアリスは仰向けになったセイヤの逞しい胸板の上に倒れ込んでしまう。だがそんな彼女を待ってましたとばかり 彼は人目も憚らず強く抱き締めてしまった。



『ちょ…っ、セイヤ!』



「……さぁそれはどうだろう

そもそも"歓迎会"とは名ばかりで、その実態は
この一大イベントに於ける主要警護らしい

……だとしたら今の内にたっぷり休んでおかないと、夜にはもう動けなくなっているかも知れないだろう?」




セイヤのこんなマイペースな行動は今に始まった事ではない。恐らく当の本人には邪気のかけらもないのだろう。が途端「ヒュ〜」という冷かしの声が周囲から上がり、堪らずアリスは頬を紅潮させた。対してそんな事はどこ吹く風の目の前の瞳には小さなイタズラの色が浮かんでおり、それを発見した彼女は一気に眉を顰めてしまう。





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