第9章 月夜の華炎①【セイヤ】
────……
「アリス!ほらこっちこっち!!
────ミナミさ〜ん、ここです。
どうですか?」
皆が息を切らして丘へ上がると、そこには緑の芝生が日差しに映える美しい草原が広がっていた。花火大会の会場を見下ろせる見晴らしのいい高台で海岸までの眺望も素晴らしい。正に穴場を知っていると言うモモコの言葉通りのその場所に、アリスは額の汗を拭いながら美しい景観と逆光になった眩しさに目を細めた。
張り切っているモモコに言われるがまま、彼らは特大のシートを芝生の上に広げていく。するとあとからやってきた彼等の上司 ミナミが、そこに悠々と腰を下ろした。
「高台から会場がよく見える。
うん────いいわね、ここにしましょう
みんな、暑い中ご苦労様」
彼女の一声により、こうして1時間以上続いた攻防劇は漸く終わりを告げた。そして今度はアルコールや食べ物の手配へと作業は移行していく。
だがアリスがふと見ると、木陰を見つけたセイヤがそこにゴロリと横になっている。まだ土の中から出て来たばかりであろう蝉の声が遠くから夏の到来を告げる中、溜め息を吐いた彼女はゆっくりと彼に歩み寄ったのだった。