第8章 煩悶の渦中へ③【レイ】R18
『────レ、イ……
…………今………なんて………?
だがその言葉が未だ信じられないとばかりにアリスは惚けている。仕方なくレイは今度はしっかりと彼女の瞳を見据え、まるで言い聞かせるように言葉を反覆した。
「 "お前が好きだ"
────とそう言った
……はぁ……お前は一体
何度私に同じ言葉を言わせるつもりだ」
レイの頬はほんのりと色づいて見える。
『だ、だって……っ
そんなの…………嘘…………』
「嘘ではない。
ならばお前はあんな"奇行"に、私が誰彼構わず 親切に対応するとでも思っていたのか?
────…相手が"お前"だから、私は受け入れた」
奇行と言われ、アリスは気不味気に目だけを逸らす。レイは頬から手を離すとアリスの手に嵌められている手錠を終ぞあっさりと外してしまった。そしてそれをソファの上に放り投げる。目的を果たした今のレイには、もうアリスを拘束する理由はなくなっていたからだ。
「だから安心しろ。
アリス、私はお前を愛している」
もう一度確認するように甘く愛を囁いたレイは呆気に取られるアリスの髪を一房掬い、そこに恭しく口付けた。その姿はまるで物語に出て来るナイトのようで、アリスは目が離せなくなる。
『………ほん、とに………?
───…レイ、が………私を………?
な、慰めや、同情、じゃなくて?』
だが望みはないと思っていたレイからのその言葉をアリスはどうしても素直に受け止められないでいた。