第8章 煩悶の渦中へ③【レイ】R18
「無意識、だと?」
アリスはそこで言葉に詰まる。彼女にとってはそれが、1番"しっくりくる"答えだったのだが、それでは当然、アリスの真意はレイには伝わらなかったようだ。彼女の答えを暫く黙考してから、だが答えが出なかったのか レイは気不味気に口を開く。
「──…全く、困った持病だな…
お前は"初めて"だったのだろう?
───直ぐに気付いてやれずにすまなかった。
だが相手が "私" で、お前が後悔していないのか
………それが私の、最大の懸念点だ」
慎重に言葉を選んだレイは、辛抱強く彼女が言葉を紡ぐのを待った。暫く後、アリスは意を決したように、だが酷く言いにくそうに小さく口を開く。ハンター試験の面接時より緊張している自分がアリスは心底情けなかった。
『そんなの、貴方こそ……
────レイこそ────
後悔してるはずでしょう?
だって、私に…っ、
あんなの、ほぼ無理矢理…っ
私────…
ちゃんと面と向かって謝らなきゃって
────ずっと、そう思ってたのに……
……これまで……
ずっと、その勇気がなくて…っ、
あなたをただ避けて…
今日まで……何度も、こんな事、繰り返して
────…言い訳なんてない…
………本当に、ごめん、なさい………』
後半消え入りそうな声でそう言ったアリスは、小さく肩を震わせている。心許ないその姿を見て 泣かせるつもりはなかったレイはそっとその肩を撫でた。