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深空の幻【恋と深空】

第8章 煩悶の渦中へ③【レイ】R18






正常な思考に戻った彼女が この部屋を去る前に何としても引き留めたい、アリスの熱を間近に感じながらレイは そんな事を考えていた。


これまでも数度の機会はあった。だが彼が気を緩めた瞬間、彼女は引き止める間もなく毎回去ってしまう。どうやら正常な思考下では、アリスはどうしてもレイには会いたくないらしい。


だがある程度のパターンはもう、想定済みだった。


曖昧なこの関係を この先もずるずると続けるつもりはない。


彼女にとっての自分とは一体どういう存在なのか、良い加減それをはっきりさせなければ、と気だけが焦っていた。その為ならば多少 強引な手を使うことも彼は厭わないだろう。


数度の絶頂を終え放けているアリスの身体をレイは綺麗に拭う。それからソファのクッションの下に用意していた鉄製の手錠を────華奢な後ろ手にガチャリと掛けた。


『え…』


その事に驚きの表情を見せるアリスの身体をそっとソファに座らせたレイは、優しくその美しい肌を隠すよう薄手のブランケットを掛けた。


「寒くはないか?」


アリスが戸惑いつつも小さく頷くのを確認したレイは徐に立ち上がる。ネクタイを緩く締め直し彼女に背を向け、翻す様に白衣を羽織った。そして棚に置いてあった血液採取用のキットを手にすると、手際よく検査の準備を進めていく。


背中越しに無言になったレイに、アリスはただ戸惑い、彼と同様推し黙るしか出来なかった。


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