第6章 煩悶の渦中へ①【レイ】R18
『───冷淡な、レイ先生……』
「……減らず口を聞く余裕は ある様だな」
赤らんだ頬、汗ばんだ首元。
これでは、まるで──────…誰かに媚薬でも含まされたみたいじゃないか、とレイは思った。
呼吸音も乱れており
首元から伝わる脈拍が平常時よりも早い。
伏せられた瞼から
気怠げな色気を感じ、
それがレイの平常心を再び緩やかに乱して行った。
『……はぁ……はぁ……』
(勘弁してくれ────…)
彼女の頬に添えられたレイの掌を、
アリスが頬から濡れた口元へと移動させていく。やがて柔らかい唇が触れると共に 彼の指先に微かな吐息が掛かった。レイは何度も我を忘れそうになる自我を必死に保ちつつ、彼女の状態の機微に集中する。
「状態は?
───苦しいのか?」
『どうだろう……苦しい、のかな?
わからない、けど、私…
────ハンターになってから、
時々、こんな風になる事が、あって──…
今日は、特に、酷い────…
身体が…熱く、なって…
───自分以外の、"誰か"の熱が
……堪らなく、欲しく、なるの……」
言いながら彼女はレイの指先にちゅ、ちゅ、と触れる様に口付けていく。
「おい……や、めろ──」
『…はぁ…はぁ…
ごめん…でも理性では、もう、止められ、なくて
あなたを目の前にしたら、余計────
────…レイ……
お願い………
私────…自分が、怖くて…
こんな事、あなたにしか、頼め、ない…──
このままじゃ、私───…
その内誰かに、
何か、してしまう、かも……
だから、
早く────…治療、して──…?』
その時近付いていた彼女の顔が
彼の意思と関わらないところで更に近付いてきたことに気付く。だがしまった と思った時には遅かった。柔らかいアリスの唇がレイのそれに強く押し付けられる。
「!……っ」
レイは慌てて顔を離そうとするも、
いつの間にか首に巻きつけられた腕に強く引き寄せられ 更に強く唇が押し付けられていった。