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深空の幻【恋と深空】

第6章 煩悶の渦中へ①【レイ】R18





2人の付き合いは短くない。 しかし彼女がこの様な衝動を抱えているとレイが知ることになったのは 彼がハンターとなったアリスの主治医となり 暫くが経った頃の事…

つまりは極最近だ。



…────遡る事数週間前────…



残業しているか と問う彼女からのメッセージに レイが「まだ病院だ」と片手間に返信をした ある日。そのやり取りから暫く後 自室のドアが開く気配に視線を上げたレイは そこにアリスがいる事に気付き驚きで目を見張る。だがすぐに明らかに様子のおかしいその姿に怪訝に顔を歪める事となった。



「お前───…こんな時間に一体どうした」



アリスは歩み寄ると虚な瞳でレイを見つめる。



『レイ先生、遅くにごめん
……実は私、


あなたに 助けて欲しく、て…』

「────…助ける?」



擦り切れたハンターの制服、高濃度のevolの気配。
その状況から恐らく戦闘後 彼女がその足でここ迄来たことを察したレイは その時酷く嫌な予感に包まれるのだった。アリスが何処かに酷い怪我をしているのではないかと思ったからだ。足取りも覚束ず、まるで発熱でもいているかの様にその顔は上気している。


レイはガタッと音を立てデスクから立ち上がった。もしかしたら 化膿した傷口から身体が熱を持ったのではないか と一気に血の気が引いたのだ。



「どこを怪我をした、診せてみろ」



直ぐに冷静な医師として振る舞う彼の言葉に、だがアリスはそれには応えず 虚な瞳で自身の衣服に手を掛ける。そしてあろうことか1枚、また1枚と 彼女は身に纏う物を脱ぎ捨てて行った。その予期せぬ事態に、レイは今目の前で起こっている現実が信じられず 己の目を疑う。



『違うの……

──────そうじゃなくて、レイ、私、あなたに…ただ───…抱いて、欲しく…て』



辿々しくも何処か妖艶にそう言葉を濁す彼女に
レイは人知れず口内の唾液を喉へと下すしか出来ないでいた。


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