第4章 きっかけ【セイヤ】
アリスの手を引きマンションのエレベーターに乗ったセイヤは、扉が閉まると彼女を引き寄せ優しく額に口付けた。そこで彼女の体温が通常より幾分高い事に気がつく。
「アリー…顔が熱いな。大丈夫か?」
『それは………セイヤのせいだよ』
顔を上げたアリスが真っ赤な顔でセイヤを見上げる。
『あなた────…
うぶなのか、慣れてるのか
…………どっち?』
セイヤにはその場面がまるでスローモーションの様に感じられた。アリスのその艶を含んだ表情に、セイヤは堪らずまるで惹きつけられる様に今度は唇へとキスを落とした。
「慣れ…、それはない。
────今ももう、いっぱいいっぱいだ」
『………流れる様な動作で、こんな事をしておいて?』
そっと触れるだけのキス。
だが潤んだ瞳のすぐ下に、今触れたばかりのさくらんぼの様な赤い唇を見て彼の抑えていたものが更に溢れ出してくる。
「ずっとあんたの唇にキスしてみたかった。
あんたにはスマートに映ったのなら、良かった。
……だが嘘は言っていない」
『それで──……これで終わりなの?』
彼女が不満そうな顔でセイヤの輪郭をそっとなぞると、彼に背伸びをして先程より少し長めに唇を押し付けた。アリスは彼に体重を預けている。
一瞬でもタガを外せば、この後自分は彼女に何をしてしまうか分からない。その時彼は薄っすらとそんな危機感を感じ初めていた。
アリスの部屋のあるフロアを一つ越えエレベーターが開いた時、2人は互いに強く抱き合い深いキスを交わしていた。