第4章 きっかけ【セイヤ】
高台から見える朝焼けは美しく淡い桃色から濃紅へと見事なグラデーションに染まっていた。
昨夜もセイヤと共に討伐を終え無事帰路についていたアリスは ふと脚を止める。
大きく深呼吸をして山あいの遠景を見下ろした。
『きれいね…』
彼女の言葉にセイヤも空に目を向ける。
「ああ、
ここからだと稜線も綺麗に見えるな
俺がここに住もうと思った理由の一つだ」
少し肌寒い早朝の風が2人の距離を近付けていた。
閑散とした住宅街を歩きながら、セイヤはゆっくりとアリスに視線を移す。
実は出会ってから暫く互いに知らずにいたのだが、2人は同マンションの上下階に住んでいた。
故に任務で組む事も多く 帰る場所も同じ2人は急速に絆を深めていったのだが…
────…互いに惹かれあい、大切な存在だと意識するようになったのは 先日の禁猟区での一件がきっかけだった。
『当ててあげる。
もう一つの理由は、職場が近いからギリギリまで寝ていられる事?』