第3章 運命の恋人【セイヤ】
────…
瞼を開けるとアリスの目の前には真っ白な天井があった。視線をゆっくり動かし辺りを見れば、無機質なモニター音で心電図が点滅し、彼女の左腕からは点滴の管が伸びている。すると計器をチェックしていた誰かが彼女の顔を覗き込んだ。
「───さん、目が覚めたのね?
気分はどう?
点滴をしたから、少しはマシになったんじゃないかしら」
見覚えあるその女性は、穏やかな笑顔でアリスに語り掛けてくる。ああ、成程。ここは………Akso病院か と彼女は思った。
「待ってて。
直ぐに先生を呼んて来るから」
彼女はアリスがいつもお世話になっている看護師の女性だった。
『あの…………私』
「────…ああ、
あなた、任務中に意識を失ったんだって。
覚えてない?」
『…………はい。
────…その、なんとなく…』
Akso病院と言う事は、先生とは恐らく 彼女の主治医、レイの事。
「念の為心電図をとったけど異常なかったわ。
原因は疲労と睡眠不足ね
あなたまた先生に叱られるわよ」
『あはは
その…ご迷惑を、お掛けしたみたいですみません』
おずおずと謝罪を口にすれば彼女は悪戯に微笑んで見せた。
「それにしても大事がなくて良かった。
これで彼氏も安心するわね」
『……………え?』
アリスに彼氏と呼べるような存在はいない。一瞬首を傾げた彼女だが、その時唐突に気を失う直前 禁猟区でセイヤを見た事を思い出した。あれはきっと夢ではなかった。アリスはそう確信した。
(………そうだ、セイヤ!
セイヤがきっと私を助けてくれたんだ)
「彼ずっと心配そうに
病室の外で待っているわよ
先生を呼ぶ前に声を掛けておくわね」