第12章 絡め取る【シン、ホムラ】R18
「アリス、約束さえ守れば
俺はこれ以上 お前をここに縛りつけるつもりはない
恋人の元へ戻るも、臨空へ帰るも────お前の自由だ」
約束、とは彼との"共鳴を果たすこと"を指しているのだろう。
アリスは決意した様にホムラの前に歩み出るとシンの視線を真っ直ぐに受け止めた
だが彼女を解き放つはずのその言葉に アリスは何処かで同時に まるで突き放されたかの様な心地になる
(散々条件を突き付けて
人を無理矢理暗点の基地に留めていたくせに──…
この人はこんなあっけない幕切れで
この一月余りの私達の時間を 締め括ろうとしている?
って……なんなのよ…)
無論このまま暗点の基地にいたいわけではない。ホムラの元に 臨空に帰りたい気持ちは紛れもない本心だ。だが…説明できないもどかしさがアリスの胸中に渦巻く。
(私……シンと離れたくない…って、
そう……思ってる?)
⭐️
その後 約束通りシンとの共鳴を果たしたアリスは その場で再度鮮明に彼との前世を体感することになる
皮肉なことに共鳴した事で より一層 彼との深い繋がりを彼女は確信したのだった。
N109区から離れる直前 アリスは思い切って シンにこう切り出してみた。
『あなたと共鳴する前、奇妙な幻覚を見たんだ』
するとシンは当然と言った表情で彼女にこう返答する。
「────奇妙じゃない。
今後はもっと見るだろう」
真っ直ぐにアリスを見据えるシン。
アリスは目を見開いた。
『あれは───…現実なの?』
呆気なくあの夢を肯定され 驚きと共にだが何処かで アリスはやはり と納得する。この感覚は思い込みでも、幻覚でもなかった。
「そうだと言ったら、謝るつもりなのか?」
あの男を選んだことを
シンの指が戸惑いがちにアリスの頬に触れる。肯定された事で 目の前の人を抱きしめたい衝動に駆られる。だがアリスは自分の帰りを待つホムラの存在を同時に思い出し 手を止めた。
「アリス、この世界はお前が見てるものとは違う。
だが────今は話す気分じゃない」
今のシンとの間には見えない大きな壁がある。