第12章 絡め取る【シン、ホムラ】R18
────…
数刻後 扉から出て来た2人の前にシンが仏頂面で歩みでる。
『な…ッ
シン──────…?
な、んで…ここに…』
「長い事あんたらを引き裂いていた詫びも兼ね、敢えて邪魔はしないでやった────と言えば、
……………状況は伝わるか?」
言いながらトントン、と自身の耳に付けているイヤホンをシンは指で叩く。その常に闇を宿しているかのような赤い瞳がその瞬間 一際黒く鬱々と アリスの視線を捉えたのだった。
アリスはハッとして漸くこの男と繋がっていたイヤホンの存在を思い出す
「────ドレスを替えたければ 用意があるぜ
お嬢さん」
もしや知らずにセンサーに触れ 先ほどの恋人との秘め事を 一部始終 聞かれてしまっていたのだろうか────そう思い至れば思わず顔に血が昇り アリスは途端にその場から逃げ出したくなった。
そんなアリスの様子を見て シンが大きな溜息をつく
「悪いが、こちらも意図せず
お前の情熱的な声を 聴くはめになった
別にわざと聞き耳を立てていたわけじゃないぜ」
動揺し シンの表情を真っ直ぐに見ることが出来ないアリスは、何故か彼に対して 罪悪感に似た感情を抱いてしまう
夢の中での思い込みかも知れない。勿論自分は悪い事など何もしていない。だがシンが何処かの"生"で自分の大切な存在であったという 不思議な感覚がアリスにはあって 彼を裏切ってしまった様な 言いようのない感情が 不本意ながら湧き上がってきたのだ
その時黙してしまったアリスの前にホムラが踏み出し シンへの視界を遮る
「ドレスは遠慮しておくよ。
君、暗点のボスなんでしょ?
どうでも良いけどこれ以上 僕の恋人にちょっかいかけるのはやめてもらえないかな」
「これはこれは────有名な芸術家先生
わざわざN109区のオークションにまで恋人の為御足労頂いたようで
招待した覚えはないが」
シンとホムラが剣呑な空気を放ち 対峙した
シンは冷たい瞳を一層鋭く光らせ アリスに聞こえる様に一言だけ放つ