第12章 絡め取る【シン、ホムラ】R18
でも────…
アリスはシンに一歩近づく。
そうして背の高い目の前の首筋に腕を絡め 強く抱き寄せた。見えない壁を取り払ってしまいたい そう強く願ったからだ。
瞬間身体を硬くしたシンもまた 諦めたように暫く後力を抜くと 彼女との身長差を埋めるように 腰を屈め 瞳を閉じる。
シンの首筋に顔を埋め アリスは彼の匂いを体内に取り込んだ。
『シン、私…』
「分かってる、お前が何も言わなくてもな」
『…何、それ…
私──…あれが夢だろうと現実だろうと…もうどうでもいいの
ただ ここ(N109区)であなたと会えた事は───悪くなかった…
色々と、ありがとう』
その時 共鳴時に発生したチェーン回路が再び 2人の手首の間に出現する。それはまるで今の自分の気持ちを表しているようだとアリスは密かに思った。離れたくないと言うように 暗闇の中2人の手首を繋ぎ光っている。
『これ…どうするつもり?』
無意識にシンを抱き寄せる腕に力がこもる。
「………切る」
『これは エネルギーチェーンの回路でしょ?
物理攻撃が効くの?』
「お前の手の事だ」
『!!』
「それか、このままN109区に泊まるか?
お前と一緒に問題解決を図る時間ならある」
見つめ合う2人は小さく微笑み合った。
シンの顔がアリスの目の前まで迫ってくる。唇が触れそうな距離に鼓動がふくらむ
「これで終わりにするつもりはない
お前も 俺を求める気持ちに 嘘は付けないだろう
──次第に、嘘がつけなくなる」
目の前のその不適な笑みは アリスにとっては最早馴染み深く 愛しくすらある。シンの言葉を否定する言葉がどうしても見つけられなかった。
『……すごい自信ね』
「だから今のお前ごと 受け止めてやる」
『……え』
「アリス、思い出せ
────お前は貪欲な女だ
欲しいものは欲しいと、本能のまま 手を伸ばせばいい」