第12章 絡め取る【シン、ホムラ】R18
弱った身体でも食べやすい料理をオーバーテーブルの上に用意され ベッドに座ったままアリスはその日の夕食を終えていた。シンお抱えのシェフの腕はここへ来ても確かだ。食べるつもりのなかった目の前の食事をアリスはシンの思惑通り時間を掛けつつもいつしかすっかりと完食していた。
『…ご馳走様
あなたのシェフって最高だね
うちでも雇いたいくらい』
不意に口元を長い指がそっと履い、拭うような動きをされる。アリスは咄嗟に顔に昇ってくる熱を避ける事ができなかった。
やはり…かつてシンはアリスの恋人だったのだろうか──…恐らくは何処か 前世と呼ばれる世界線か何かでの…
未だ痛むこめかみを抑える。
(頭でもおかしくなったのかな──…でなければあんな恥ずかしい夢を見た意味が分からない)
まさかシンにあのおかしな夢の妄想を話す事も出来ないし、彼が言った通り もし欲求不満なのだとしたら 夢に見る相手が違うだろう───…もう重症だ
「残念ながら出張サービスは受け付けていない──…がここにいればいつでも食べられるだろう?
そう思うのなら、ずっとここにいればいい」
『それは出来ないよ』
「ふ───…
ならばまずは体調を整える事だな
夕食後も、ちゃんと薬を飲めよ」
出会った時から思っていたが、シンはちょっと他でも見ないくらいの男前な風貌だ。それによって 自分の秘められた性癖でも刺激されているのかも知れない。威圧的で悪事の限りを働く暗点のボスとは分かっていても、圧倒的な色気と…悔しいがその彼の唯一の長所にだけにはどうしても目がいってしまう。
「どうした?
────俺の顔に何かついているか?」
濡れたような瞳…引き込まれる様な怪しい魅力が彼にはある。
『別に…
ただ暗点のボスって随分と暇なんだなって思って…
あなた、こうして一日中私に張り付いているつもり?』