第12章 絡め取る【シン、ホムラ】R18
────…
(息が苦しい…──身体が怠い………)
乱れた呼吸で瞼を開けると 目の前には見知った人物がいた。目覚めた直後アリスの意識は朦朧としており ここが夢か現実か 直ぐには判別がつかない。
目の前で無防備に目を瞑り 横たわっているシン───…
アリスは半ば無意識に体を起こすと、勢い良くシンの両腕を抑え付けその逞しい身体に馬乗りになっていた。
シンは直ぐに瞳を開き 艶めいた視線でアリスを見上げる。
『……はぁ……見つけた────
もう、離さない、よ』
だがそう高らかに宣言した直後、ぐらりと身体の力が抜けていく。そのまま力なく シンの身体の上に覆い被さってしまった。
「────情熱的だな
病人の癖に、まさか欲求不満なのか?
確かにお前が健康なら──…喜んで相手してやりたいところだが…」
そう言ったシンに、瞬時に体勢が入れ替えられる。いつの間にか押し倒されているのはシンではなく 自分の側になっていた。その衝撃で目の前の世界がまたぐるぐると回り始める。
「今はやめておいた方が良さそうだ」
頭上にあるのは憎たらしい程の不適な笑み。この表情を私は知っている。何処かで懐かしいと思っている。
だが徐々にハッキリしてきた意識の中、やっと気付いた──…これは夢ではない、現実だ。シンは暗点のボスで…今のアリスの恋人ではない。
『………ご、ごめん…
……私……何言って────…
────寝…惚けて──…』
咄嗟にそう声にしたが、シンは楽しそうに小さく首を傾げる。顔が近付いてきて 唇に触れる彼の吐息に 大きく鼓動が鳴った。
『──…っ』
だがシンはゆっくりと互いの額を合わせただけで、その後身を起こすと平然とサイドテーブルにあるペットボトルに手を伸ばす。
「まだ熱が高い。
薬の時間だ────飲めるな?」
『………』
火照った顔で躊躇しつつも小さく頷けば 後頭部の枕が立てられ、シンはアリスの上半身をそっとそこにもたれさせた。目の前に差し出された薬を、彼女は 何も言えずにただ 大人しく飲み下すしかなかった。