第12章 絡め取る【シン、ホムラ】R18
⭐️
「何だって?!…帰ってない?」
「ああ、アリスは最近…少なくともここ1週間は この家には戻っていない。
数日前 仕事で顔を合わせはしたが…
おかしいな…俺はてっきり あんたと一緒だと思っていた」
閑静な住宅街にある マンションのエントランス。セイヤはそこでホムラと対峙し端正な顔を歪める。
同僚を心配する以上の感情が あるいは彼にもあるのかも知れない───探る様な視線を逆に向けられたホムラは 途端に別の意味で嫌な予感に包まれていた。
なんの前触れもなく送られて来た アリスからのメッセージ。
もし仮に そうせざるを得ない何かが彼女の身に起こっているのだとしたら───この釈然としない全ての事象にも、かろうじて納得が出来る。 ホムラは強い表情で顔を上げた。
「一体 何があった?もしかして──…」
「N109区」
ホムラの呟きに セイヤが眼光を強める。
「───…きっとあそこだ
彼女のパートナーなら君も知っているだろう?
あの子は今、多分あの場所にいる
そこで何らかのトラブルに巻き込まれたんだ」
「……成る程、
確かにその可能性はあるが」
「何があったのかなんて僕の方が知りたいぐらいさ
ただ突然 なんの脈絡もなく
今朝 僕のところに彼女から別れのメッセージが届いた
───… "もう連絡してこないで" ってね
……こんなの、明らかにおかしいよ
僕は今すぐ、彼女を助けに行く」
「だが危機に陥っているのなら
パートナーの俺に何の助けも求めてこないのはおかし
「君、いいからもう黙って──」
ホムラはセイヤに思考を遮られるのを拒絶した。
最後に会った時 彼女から別れの予感など微塵も感じられなかった。 アトリエで共に過ごした甘い時間は間違いなく 一点の曇りもない 幸せなものだった。その時間の一分一秒に アリスから嘘は一つも感じていない。
疑念はやがて 確信へと変わる。
N109区────
だがそもそもその場所に潜入できるよう協力したのは、他でもないホムラだった。
無理をしないよう 充分に伝えたつもりだったけれど──…
(君はいつだって、自分を過信し過ぎるみたいだね
…でも今回は、お仕置きが必要だよ)