第12章 絡め取る【シン、ホムラ】R18
「酷い顔だな
気分転換に遠出して乗馬でもするか?
下のジムでトレーニングをしてもいい」
シンの言葉にアリスは直ぐ返事を返さなかった。すると目の前にプラチナ色に光るカードが差し出される。
「取り敢えず これも渡しておく。
このカードもこの場所にあるものも全て、
お前の好きに使って構わない。
恋人にも手出しをしないと約束しよう
ただし────
暫くこの場所にいることが
"条件" だ」
手渡されたカードを手に アリスは シンに乾いた笑みを向けた。滅多にお目にかかれない高所得者御用達のものだ。
ホムラも同様のものを持っている。がいくら恋人とは言え こんな風に手渡され「好きに使って構わない」などと俗物的なことを言われた事は今まで一度もない。
私がさして 贅沢に興味がないことを、ホムラは知っているからだ。
お金が有り余る程あったとしても 彼が描いてくれた絵や手作りのプレゼント以上にアリスを心から喜ばせるものはなかった──…
(は……
こんな事で 私の気を引けるとでも思ってるの?
だとしたら……低俗すぎて、笑っちゃうわね)
『貴方が破産するような高価な買い物を
しこたましても構わないってこと?』
アリスは挑発する様に わざとシンの目の前で カードをヒラヒラと降って見せた
「なんだ国でも買うつもりか?
───まぁそれも良いだろう
やってみな────…
簡単に 破産などは しない」
その答えに楽しそうに軽い返答をするシン。
彼は無論 破産の心配など微塵も考えてはいないのだろう。それもそのばず 暗点のボスの財力など ハンターの小娘ごときに底が知れるものではない。このカードだけでも冗談抜きで国さえ買えてしまえるレベルのものなのかも知れない。
シンのその崩れない余裕に 俄然 バカされているような気分になったアリスは 思わずむっと顔を顰めたのだった。