第3章 不思議なみぞの鏡【賢者の石】
トレイに飛び込むように入り、彼女が入っているであろう個室の前に立つ。
「ハーマイオニー·····」
「独りにしてちょうだい!」
「·····分かったわ」
そう言いながらも、私はトレイからは出なかった。
ハーマイオニーが何時か出てくるまで、待つことにしてから午後の授業は申し訳ないけれどサボることにする。
今は声をかけても、きっと無理。
ならせめて待つことにしようと思いながら、壁に背を預けてハーマイオニーがいる個室を見つめた。
それからどのぐらい時間が経ったのだろう。
ふと、窓の外を見れば暗くなっていて星空が見えていた。
もう夜になってしまったのかと思っていれば、ガチャッとトイレの扉が開く音がする。
「·····ハーマイオニー」
個室からは目を真っ赤にさせたハーマイオニーが出てきた。
「·····貴方、ずっとそこにいたの!?私、独りにしてって言ったのに」
「親友が泣いてるのに、独りには出来ないでしょう?」
「·····お情けで、私と居るんじゃないの」
ハーマイオニーの目がわずかに揺れて潤んでいる。
そんな彼女の手を取れば、少しだけ冷たく冷えていた。
「私は、お情けで一緒なんかいないわ。ハーマイオニーを親友と思っているから、居るんだよ。信じてくれないの·····?」
「·····信じても、いいの?ロンが言ってたのは違うって」
「信じてちょうだい」
暫くハーマイオニーは無言だったけれど、私の手をぎゅっと握ってくれた。
その事が嬉しくて微笑んでいれば、ハーマイオニーは目元を擦りながら笑う。
「ありがとう、アリアネ」
「お礼なんていらないわ」
そう、話している時だった。
何処からか悪臭がしてきて、私とハーマイオニーは思わず顔を顰める。
なんとも言えない悪臭。
「何かしら、この匂い·····」
「何処から臭ってるのかしら」
二人で眉を顰めている時だった。
聞いたこともない、ブァーブァーという唸り声が聞こえてきて、とんでもないぐらい大きな足音が聞こえてくる。
その音に私とハーマイオニーは目を見開かせた。
目の前に化け物がいた。
背は4メートルぐらいあり、墓石のような鈍い灰色の肌に岩肌のようなゴツゴツした巨体。
禿げた頭は小さく、短い足は太くてコブだらけの足、それなのに異常に長い腕。
「·····トロール」