第3章 不思議なみぞの鏡【賢者の石】
「辛くて苦くもある·····」
「貴方は今、そんな恋をしているのかしら?」
「·····少しだけ、話を聞いてくれる?」
「ええ、勿論」
ハーマイオニーに、私はゆっくりと話を始めた。
恋している相手がセブというのは隠して、少し話を濁しながらも。
「私が恋してる人はね、年上の人なの。でもその人は、私のことを子供としかみていない。親友の子供としか見ていないの」
「そう、年上の人なのね」
「かなり年が離れているの」
セブは私より二十歳も年上。
私よりうんと大人であり、二十歳も年上なら好きな人が居てもおかしくないし私を子供としか見ていないのも仕方ない。
だけど、私は単に子供として見て欲しくなかった。
「貴方が、その人に恋したのはいつなの?」
「自覚したのは九歳の頃よ。でも、もっと前かもしれない。最初はね、凄く優しい人としか思わなかったの。でも、気が付けば好きだって·····」
私を静かに見守り続けてくれた事、そして両親の話を沢山してくれたこと。
私が両親の話を聞いて寂しくなったら、不器用に、だけれど優しく頭を撫でてくれた。
笑わずに愛想が悪いけれど、時折小さく笑う所。
ちょっとぎこちなく撫でてくれる、少しカサついた手。
静かで落ち着いている低い声、目を細めている所が全部好き。
「だけど·····私は、子供にしか見られていない」
「あら、それなら子供に見られないようにすれば良いんじゃないの?」
「見られないように·····?」
「私たちはこれから大人になっていくわ。だから、その間にその人に子供に見られないようにしていけばいいじゃないの」
セブに、子供に見られないようにする。
これから大人になっていくから·····その言葉は少しだけ私の心を明るくさせた。
「そうよね·····。私たち、これから大人になっていくものね」
「ええ。それに魔法族は長生きでしょう?長く時間がかかっても、その人に意識して貰えるようにしていけばいいじゃないの。難しく考える必要はないのよ」
「そう、よね。そうよね·····ありがとう、ハーマイオニー。私、少しづつでも大人になって彼に意識してもらうようにするわ」
「お礼はいいわよ、アリアネ。貴方から、いい報告を何時か聞けることを期待しているわ」
「何時か、報告出来るようにするわ。なんだか、恋の相談をしたの初めてだから照れるわ」