第3章 不思議なみぞの鏡【賢者の石】
好きな人に、好きな人がいたと知って不機嫌になるなんて凄く子供だ。
そう分かっているけれど、セブの『関係ない』という言葉に苛立ってしまった。
素早く立ち上がってから、私はセブに背中を見せて走るようにしてその場を去った。
そして魔法史の授業がある教室に、飛び込むように入ればそこにはハーマイオニーの姿だけ。
「あら、アリアネ。私、てっきり貴方はもう来ていると思っていたけれど私の方が早く来たのね。一人だけだから驚いたわ」
「ハーマイオニー·····」
「·····どうしたの?」
私に違和感を覚えたのか、ハーマイオニーは眉を少しだけ寄せて、そう声をかけてきた。
「少し·····うん、少しね、色々」
言葉を濁しながら、ハーマイオニーの隣に座る。
そして私は机に突っ伏してから、セブの言葉を思い出してしまった。
『恋人じゃないなら、結構。まだ早すぎる年齢だと吾輩は思うからな』
『本当に好きかどうか判断出来ているのかも怪しい年頃だ』
『·····吾輩に好きな人間が居たかどうかは、関係なかろう』
その言葉に、胸がぎゅっと締め付けられる。
好きな人に好きかどうか判断出来ていないと言われて、好きな人が居たけれど私には関係ないと言われた。
それが酷く悲しくてたまらない。
「アリアネ·····?本当に、どうしたの?私が聞いても大丈夫な事なら、聞かせてちょうだい」
「·····ハーマイオニー。私たちの年齢って、恋をするのにも恋人が出来るのにも早すぎる年齢と思う?」
私の問いに、ハーマイオニーは少し目を見開かせた。
だけど直ぐににっこりと、優しい微笑みを浮かべる。
「別に早いとは思わないわ。恋に遅いも早いもないと思うもの」
「·····そうよね」
「もしかして、貴方には今好きな人がいるのかしら?」
やっぱり気付かれるよね。
そう思いながら、私は小さく頷いた。
「そう。そして、貴方は誰かに恋をするには早すぎる年齢と言われたのね」
「·····ええ。それに、好きな人に好きな人が居たって分かって」
「辛くなったのね」
彼女は全てお見通しのように言う。
そして、ハーマイオニーは暫く考えてから私の頭を優しく撫でてくる。
「恋というのは、そう簡単に甘くはならないわよね。本にも書いてあったわ。恋は甘いけれど辛くて苦くもなるって」