第2章 授業と決闘【賢者の石】
「フィルチはこのドアに鍵が掛かってると思ってる。もうオーケーだ。ネビル、離してくれよ!」
ハリーはひそひそ声でいい、先程からハリーのガウンの袖を引っ張るネビルにそう言った。
だがある音が聞こえてきて、私とハリーはそちらへと振り向く。
「え?なに?」
「何か、音が·····嘘でしょう」
私は唖然としてしまった。
てっきり私たちが入ってきたのは教室か何かと思っていたけれどそうじゃない。
私たちが今いる場所は廊下だった。
四階の禁じられた廊下。
そして私たちは何故、ここが立ち入り禁止となっているのか嫌でも納得した。
(·····入るんじゃなかったわ)
私たちが見たのは、怪獣のような犬の目。
床から天井までの空間全てが犬で埋まっていて、犬は普通の犬じゃない。
頭が三つ、血走った三組のギョロギョロとしている目。
三つの鼻がそれぞれの方向にヒクヒクとしていて、三つの黄色い牙をむき出していて、ヨダレがだらりと垂れている。
怪物のような犬は、六つの目で私たちを見下ろしてきていた。
「·····逃げなきゃ。逃げるわよ」
私の声にハリーがハッとしてから、慌ててドアノブをまさぐり扉を開けた。
すると私たちは反対方向に倒れ込んで、ハリーが急いで扉を閉めた音が聞こえる。
フィルチはいない。
私たちはそれを確認してから、慌ててさっき来た廊下を走り出した。
とにかく走り、なんとか八階にある太った婦人の肖像画の所までたどり着く。
「まあ、いったいどこに行ってたの?」
私たちは息を切らしていて、汗だく。
その様子を見ていた婦人は凄く驚いた顔をしている。
「何でもないよ。豚の鼻(ビッグスナウト)、豚の鼻(ビッグスナウト)」
息切れしながらもハリーが合言葉を言うと、肖像画が開いて私たちは談話室に駆け込んだ。
そして私はハーマイオニーと共にソファにへたり込み、しばらくの間私たちは言葉が出なかった。
「·····私、死ぬかと思ったわ」
「ええ、本当にね·····」
やっとの事で言葉がでる。
「あんな怪物を学校の中に閉じ込めておくなんて、連中はいったい何を考えているんだろう」
「さあ·····」
「世の中に運動不足の犬がいるとしたら、まさにあの犬だね」
「あなたたち、どこに目をつけるの?あの犬が何の上に立ってたか、見えなかったの?」
「床の上じゃない?」