第16章 闇の印【炎のゴブレット】
アーサーおじさんは珍しく険しい表情をしていた。
「たとえいまはそうでないにしても、1度は『死喰い人』だった者でなかったとしたら、辻褄が合わない·····さあ、もうだいぶ遅い。何が起こったのか、母さんが聞いたら、死ぬほど心配するだろう。あと数時間眠って、早朝に出発する『移動キー』に乗ってここを離れよう」
時間を見れば、もう朝の3時。
目が冴えてしまっていて眠ることが出来るだろうかと思いながら、女子用テントへと向かった。
ハーマイオニーもジニーも眠れそうにないと呟きながらも、ベッドに潜り込みながら眠りにつこうとしていた。
眠ることは出来るだろうかと思っていれば、心身共に疲れていたのだろう。
やがて微睡み、私は少しだけの眠りについた。
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数時間眠ったあと、私たちはアーサーおじさんに起こされた。
そしてまだ眠たげにしながらも、皆で『移動キー』の古いタイヤに乗ってから、太陽が登りきる前にストーツヘッド・ヒルに戻ることが出来た。
夜明けの薄明かりの中、オッタリー・セント・キャッチポールを通り、『隠れ穴』へと向かう。
道中、みんな疲れ果てていて喋ることなく歩き続けていた。
路地を曲がり、『隠れ穴』が見えた時路地の向こうから叫び声が聞こえてきた。
「ああ!よかった。ほんとうによかった!」
叫び声の主はモリーおばさん。
家の前でずっと待っていたようで、真っ青な表情で手に丸められた『日刊預言者新聞』が握られていた。
「アーサー、心配したわ。ほんとうに心配したわ。リーマス!リーマス!」
するとモリーおばさんがリーマスの名前を呼んだ。
まさかと思えば、家の中からリーマスが顔を覗かせてからこちらに駆け足でやってくる。
そして私を強く抱き締めてきた。
「リーマス!?」
「よかった·····」
リーマスの体は僅かに震えていた。
「ルーピン先生、なんでここに?」
「日刊預言者新聞を読んでね·····。慌ててここに来たんだよ」
ふと、モリーおばさんが持っていた新聞を見ればそこにはとある見出しがあった。
『クィディッチ・ワールドカップでの恐怖』
梢の上空には『闇の印』がモノクロ写真で写っている。
その新聞を見ながら、私はリーマスのことを抱きしめ返しながら自分が安堵しているのに気がついた。