第16章 闇の印【炎のゴブレット】
別に呼んでもいいのだけど、アーサーおじさん達はそれを嫌がる。
だからウィーズリー家の前では『ヴォルデモート』と呼ばないように気をつけている。
「その通りだ。だからみんな恐怖に駆られるのは当然なんだ」
「よくわからないな。だってあれはただ、空に浮かんだ形にすぎないのに·····」
「ロン、『例のあの人』も、家来も、誰かを殺すときに、決まってあの『闇の印』を空に打ち上げたのだ。それがどんなに恐怖を掻き立てたか·····分からないだろう。おまえはまだ小さかったから。想像してごらん。帰宅して、自分の家の上に『闇の印』が浮かんでいるのを見つけたら、家の中で何が起きているかわかる·····」
おじさんは身震いをした。
「誰だって、それは最悪の恐怖だ·····最悪も最悪·····」
一瞬だけ、みんながしんとなった。
静かな沈黙が少し居心地悪く感じていれば、その沈黙をビルが破った。
腕のシーツを取り、傷の具合を確認しながら言う。
「まあ、誰が打ち上げたかは知らないが、今夜は僕たちの為にはならなかったな。『死喰い人(デス・イーター)』たちがあれを見た途端、怖がって逃げてしまった。誰かの仮面を引っペがしてやろうとしても、そこまで近づかないうちにみんな『姿くらまし』してしまった。ただ、ロバーツ家こ人達が地面にぶつかる前に受け止めることは出来たけどね。あの人たちはいま、記憶修正を受けているところだ」
「『死喰い人』?『死喰い人』って?」
ハリーが不思議そうにビルに尋ねた。
「『例のあの人』の支持者が、自分たちをそう呼んだんだ。今夜僕たちが見たのは、その残党だと思うね。少なくとも、アズカバン行きをなんとか逃れた連中さ」
「そうだという証拠は無い、ビル。その可能性は強いがね」
アーサーおじさんの声は絶望的だった。
そんな声にロンは気にせずに言葉を投げた。
「うん、絶対そうだ!パパ、僕たち、森の中でドラコ・マルフォイに出会ったんだ。そしたら、あいつ、父親があの狂った仮面の群れの中にいるって認めたも当然の言い方をしたんだ!それに、マルフォイ一家が『例のあの人』の腹心だって、僕たちみんなが知ってる!」
「でも、ヴォルデモートの支持者って」
ハリーがその名前を出した途端、私以外のみんながギクリと身体を跳ねさせた。