第16章 闇の印【炎のゴブレット】
「私の命令に逆らうしもべに用はない」
クラウチは私とハーマイオニーを冷たい眼差しで見ながら、冷たい子だを吐き出した。
「主人や主人の名誉への忠誠を忘れるようなしもべに用はない」
その瞬間、ウィンキーは激しく泣き出した。
悲痛過ぎるその姿に、私はクラウチへと怒りが込み上げていく。
それは私だけじゃなくてハーマイオニーもそうであり、顔を怒りに染めていた。
酷く居心地の悪い沈黙が流れる。
やがて、アーサーおじさんがこの沈黙を破った。
「さて、差し支えなければ、わたしはみんなを連れてテントに戻るとしよう。エイモス、その杖は語るべきことを語り尽くした。よかったら、ハリーに返してもらえまいか──」
エイモスさんは無言でハリーに杖を返した。
「さあ、4人とも、おいで」
そう言葉を投げかけられたが、私とハーマイオニーはその場に立ち尽くしていた。
泣き叫ぶウィンキーからどうしても目が離せずにいると、アーサーおじさんが呼びかけてきた。
「ハーマイオニー、アリアネ!」
急かすように呼ばれ、私とハーマイオニーはアーサーおじさんとハリーとロンの元に向かって歩き出した。
そして木立を抜けてテントへと向かっている最中、ぼそりとハーマイオニーが呟く。
「ウィンキーはどうなるの?」
「わからない」
「みんなの酷い扱い方ったら!ディゴリーさんは初めっからあの子を『しもべ』って呼び捨てにするし·····それにクラウチさんたら!犯人はウィンキーじゃないって分かってるくせに、それでもクビにするなんて!ウィンキーがどんなに怖がっていたかなんて、どんなに気が動転してたかなんて、クラウチさんはどうでもいいんだわ。まるで、ウィンキーがヒトじゃないみたいに!」
「そりゃ、ヒトじゃないだろ」
ロンは静かにそう呟いた。
何故こうも、この人は要らないことを言うんだろうか。
「ロン!」
「なんで怒るんだよ、アリアネ!だって本当だろ?あの子はヒトじゃない。屋敷しもべ妖精だ」
「だからと言って、ロン、ウィンキーがなんの感情を持っていない事にはならないでしょ。あのやり方には、ムカムカするわ」
「ハーマイオニーの言う通りよ。いくらでなんでもあれは酷すぎるわ。扱い方が酷い」
「ハーマイオニー、アリアネ、私もそう思うよ」