第16章 闇の印【炎のゴブレット】
「しかし、それならウィンキーは真犯人のすぐ近くにいたはずだ!しもべ、どうだ?誰か見たか?」
エイモスさんは急かすようにウィンキーに聞いた。
するとウィンキーは一層激しく震えだだし、大きな瞳でエイモスさんからバクマンへ、そしてクラウチへを見る。
それから誰もが聞こえるようにゴクリと唾を飲み込む。
「あたしは誰もご覧になっておりません·····だれも·····」
「エイモス」
クラウチが無表情にエイモスさんの名前を呼んだ。
「通常なら君は、ウィンキーを役所に連行して尋問したいだろう。しかしながら、この件は私に処理を任せてほしい」
エイモスさんはその言葉が気に入らなさそうだった。
だけどクラウチが魔法省の実力者だからなのか、断るにもいかないのだろうと見てわかる。
「心配ご無用。必ず罰する」
「ご、ご、ご主人さま·····」
ウィンキーはクラウチを見上げて、目に涙をいっぱい浮かべていた。
「ご、ご、ご主人さま·····ど、ど、どうか·····」
「ウィンキーは今夜、私が到底ありえないと思っていた行動をとった。私はウィンキーに、テントにいるようにと言いつけた。トラブルの処理に出かける間、その場にいるよう申し渡した。ところが、このしもべさ私に従わなかった。それは『洋服』に値する」
「おやめください!」
ウィンキーがクラウチの足元に身を投げ出して叫ぶ。
私はそんなウィンキーを見て、クラウチを見てから目を見開かせていた。
『洋服』というのはしもべ妖精をクビにするということ。
ウィンキーは何もしていないのに、クラウチはウィンキーをクビにするというのだ。
「どうぞ、ご主人さま!洋服だけは、洋服だけはおやめください!」
ドビーは靴下を貰ったことにより自由になって喜んでいた。
だがウィンキーはそうじゃないのは見てわかる。
「でも、ウィンキーは怖がってたわ!」
ハーマイオニーが突如そう叫んだ。
「あなたのしもべ妖精は高所恐怖症だわ。仮面をつけた魔法使いたちが、誰かを空中高く浮かせていたのよ!ウィンキーがそんな魔法使いたちの通り道から逃れたいって思うのは当然だわ!」
「クラウチさん。ウィンキーが怖がって逃げ出すのも当たり前です。それなのに、罰を与えるなんて酷いです」
私もハーマイオニーに続けて言葉を述べたが、クラウチは冷たい目でウィンキーを見下ろしていた。