第16章 闇の印【炎のゴブレット】
「私が召使いたちに常日頃から『闇の印』の創り出し方を教えていたとでも?」
酷く気まずい沈黙が流れた。
エイモスさんは顔を蒼白にさせながら、しどろもどろと言葉にする。
「クラウチさん·····そ·····そんなつもりはまったく·····」
「いまや君は、この空き地の全員の中でも、最もあの印を創り出しそうにない2人に嫌疑をかけようとしている!ハリー・ポッター、それにこの私だ!この子の身の上は君も重々承知なのだろうな、エイモス?」
「もちろんだとも、みんなが知っている」
私はクラウチの言葉に眉間に皺を寄せた。
さっきまでハリーや私達が『闇の印』を創り出したと思っていたのに、ハリー・ポッターだと知ればあんなことを言うなんて。
そう思いながらクラウチとエイモスさんを交互に見る。
エイモスさんは蒼白のまま、クラウチは今にもエイモスさんに噛みつきそうな表情。
「その上、『闇の魔術』も、それを行う者をも、私がどんなに侮蔑し、嫌悪してきたか、長いキャリアの中で私の残してきた証を、君はまさか忘れたわけではあるまい?」
「クラウチさん、わ、私は貴方がこれに関わりがあるなどとは一言も言ってはいない!」
エイモスさんは顔を赤らめながら、口ごもる。
「ディゴリー!私のしもべを咎めるのは、私を咎めることだ!」
クラウチは怒りを顕にしながら叫ぶ。
その声が森にやけに響いた。
「他にどこで、このしもべが印の創出法を身につけるというのだ?」
「ど、どこででも修得できただろうと」
「エイモス、その通りだ。どこででも『拾得』できただろう·····ウィンキー?」
アーサーおじさんが口を挟み、優しくウィンキーに尋ねた。
だけどウィンキーは怯えていて、アーサーおじさんの言葉にギクッと体を跳ねさせる。
「正確に言うと、どこで、ハリーの杖を見つけたのかね?」
「あ·····あたしが発見なさったのは·····そこでございます。そこ·····その木立の中でございます」
ウィンキーは小声で囁きながら、木立を指さした。
「ほら、エイモス、わかるだろう?『闇の印』を創り出したのが誰であれ、そのすぐあとに、ハリーの杖を残して『姿くらまし』したのだろう。あとで足がつかないのうにと、狡猾にも自分の杖を使わなかったら、ウィンキーは運の悪いことに、その直後にたまたま杖を見つけて拾った」