第16章 闇の印【炎のゴブレット】
魔法省の役人がこれだけいるなかで、声を上げるのは中々緊張するもの。
それでもハーマイオニーは言葉を続けた。
「ウィンキーの声は甲高くて小さいけれど、私たちが聞いた呪文は、ずっと太い声だったわ!」
そう言うとハーマイオニーは私たちの方を振り返った。
「ウィンキーの声とは全然違ってたわよね?」
「ええ、ウィンキーとは違ったわ」
「ああ。しもべ妖精の声とははっきり違ってた」
「あん、あれはヒトの声だった」
私とハリーとロンは頷き合いながら、ウィンキーでは無かったことを告げた。
あの時の声は完全に男の、しかもヒトの声だったし、ウィンキーの声とは違っていた。
「まあ、すぐにわかることだ」
エイモスさんはまるで、そんなことはどうでもいいと言わんばかりの声で唸った。
「杖が最後にどんな術を使ったのか、簡単にわかる方法がある。しもべ、そのことは知っていたか?」
ウィンキーは震えながら、必死に顔を横に振った。
エイモスさんは杖を掲げると、自分の杖とハリーの杖の先を突き合わせた。
「ブライオア・インカンタート(直前呪文)!」
エイモスさんが呪文を唱えると、杖の合わせ目から蛇を舌のようにくねらせた巨大な髑髏が飛び出す。
その髑髏にハーマイオニーや何人かの役人が息を飲むのが聞こえてくる。
「デリトリウス(消えよ)!」
またエイモスさんが呪文を唱えると、髑髏は消え去った。
「さて」
エイモスさんは震え続けているウィンキーを、勝ち誇ったような容赦のない瞳で見下ろす。
「あたしはなさっていません!あたしは、けっして、けっして、やり方をご存知ありません!あたしはよいしもべ妖精さんです。杖はお使いになりません。杖の使い方をご存知ありません!」
「おまえは現行犯なのだ、しもべ!凶器こ杖を手にしたまま捕まったのだ!」
ウィンキーは震えていた。
エイモスさんの吼える声に怯えていて、それが可哀想でたまらない。
するとアーサーおじさんが、エイモスさんの肩を掴んだ。
「エイモス。考えてもみたまえ·····あの呪文が使える魔法使いは僅かひと握りだ。·····ウィンキーがいったいどこでらこれを習ったというのかね?」
「おそらく、エイモスが言いたいのは」
それまで黙っていたクラウチが口を開いた。
酷く冷たく、怒りを込めている声である。