第16章 闇の印【炎のゴブレット】
バクマンが喘ぐように叫んだ。
そして仲間の役人達に、何かを聞こうとした拍子に足元にいるウィンキーを危うく踏みつけそうになっていた。
「いったい誰の仕業だ?捕まえたのか?バーティ!いったい何をしてるんだ?」
クラウチが戻ってきた。
両手は手ぶらであり、幽霊のように蒼白の顔をして体を震わせている。
「バーティ、いったいどこにいたんだ?どうして試合に来なかった?君の屋敷しもべが席を取っていたのに。おっとどっこい!」
やっとバクマンは足元にいるウィンキーに気が付いた。
「この屋敷しもべはいったいどうしたんだ?」
「ルード、私は忙しかったのでね。それと、私のしもべ妖精は『失神術』にかかっている」
クラウチはギクシャクした話し方で、バクマンに説明する。
そして彼から話を聞いたバクマンは驚いた表情を浮かべた。
「『失神術』?ご同輩たちがやったのかね?しかし、どうしてまた──?」
バクマンは考える素振りを見せたあと、突如その表情が何か思いついたものへと変わった。
そしてウィンキーを見下ろしてからクラウチを見る。
「まさか!ウィンキーが?『闇の印』を創った?やり方も知らないだろうに!そもそも杖が要るだろうが!」
「ああ、まさに、持っていたんだ」
エイモスさんが重苦しそうに呟く。
「杖を持った姿で、私が見つけたんだよ、ルード。さて、クラウチさん、あなたにご異議がなければ、屋敷しもべ自身の言い分を聞いてみたいんだが」
エイモスさんの言葉に、クラウチは何も答えない。
しかし沈黙を了解と取ったのか、エイモスさんは杖を上げて、ウィンキーに向かって呪文を唱えた。
「エネルベート(活きよ)!」
呪文が唱えられた瞬間、ウィンキーが微かに動いた。
寝ぼけたように、2、3度瞬きをしながらヨロヨロと身を起こし始める。
そしてエイモスさんの足に目を止めてから、おずおずと目を上げて彼を見つめる。
それから更にゆっくりと、空へと目をやってからその大きな瞳に髑髏を写した。
その瞬間、ウィンキーは息を呑んで狂ったように辺りを見渡してから魔法使いを見て、怯えたようにすすり泣き始めた。
「しもべ!」
すすり泣くウィンキーに、エイモスさんが厳しい口調で問いかける。
「わたしが誰か知っているか?『魔法生物規則管理部』の者だ!」