第16章 闇の印【炎のゴブレット】
「よし!捕まえたぞ。ここにだれかいる!気を失ってるぞ!こりゃあ……なんと……まさか……」
「誰か捕まったって?」
クラウチは信じられないと言わんばかりの声を出した。
それほどまでして、私達を犯人だと決めつけたかったのだろうか。
「だれだ?いったい誰なんだ?」
暫くすると、小枝が折れる音に木の葉が擦れ合う音が聞こえてきた。
そして足音ともにエイモスさんが姿を現したが、両腕にぐったりした小さものを抱えている。
私はその小さなものが何か直ぐに気が付いた。
屋敷しもべ妖精のウィンキーだ、クラウチの屋敷しもべ妖精の。
エイモスさんがクラウチの足元にウィンキーを置いた時、クラウチは身動きせずに無言のまま。
そして魔法省の役人がクラウチを一斉に見た。
クラウチはウィンキーを見下ろしたまま立ちすくんでいたけれど、やがて我に返って呟いた。
「こんな、はずは……ない。絶対に──」
クラウチは途切れ途切れにそう呟くと、エイモスさんの後ろに回って荒々しい歩調のままウィンキーが見つかったあたりへと行こうとした。
「無駄ですよ。クラウチさん。そこにはほかにだれもいない」
だけどクラウチはその言葉を聞かずに、あちこち動き回って木の葉をガサガサと音、茂みを掻き分ける音を立てていた。
「なんとも恥さらしな」
失神しているウィンキーの姿を見下ろしながら、エイモスさんはそう呟いた。
「バーティ・クラウチ氏の屋敷しもべとは……なんともはや」
「エイモス、やめてくれ」
アーサーおじさんが項垂れたように言った。
「まさか本当にしもべ妖精がやったと思ってるんじゃないだろう?『闇の印』は魔法使いの合図だ。創り出すには杖が要る」
「そうとも。そしてこの屋敷しもべは杖を持っていたんだ」
「なんだって?」
「ほら、これだ」
エイモスさんは杖を持ち上げて、アーサーおじさんに見せた。
「これを手に持っていた。まずは『杖の使用規則』第3条の違反だ。ヒトにあらざる生物は、杖を携帯し、またはこれを使用することを禁ず」
ちょうどその時だった。
ボンッという小さな破裂音のようなものが聞こえ、バクマンがアーサーおじさんの脇に『姿現し』をして現れた。
息を切らして、ここが何処かよく分かっていない様子で辺りをクルクルと見渡している。
そして目はエメラルドの髑髏に向いた。
「『闇の印』!」