第1章 ホグワーツ魔法魔術学校【賢者の石】
「駅でそばにいた黒い髪の子、覚えてる?あの子はだーれだ?」
フレッドとジョージが言わんとする事が分かった。
だがモリーおばさんは、二人が何を言おうとしているの分からずに首を小さく傾げる。
「だあれ?」
「「ハリー・ポッター!」」
すると、先程まで大人しくしていたジニーの目が輝いてから列車の方に向く。
どうやらジニーはハリーに興味があるみたいで、モリーおばさんの手を引っ張る。
「ねえ、ママ。汽車に乗って、見てきてもいい?ねえ、ママ、お願い……」
「ジニー、もうあの子を見たでしょ?動物園じゃないんだから、じろじろ見たらかわいそうでしょう。でも、フレッド、ほんとうなの?なぜそうだとわかったの?」
「本人に聞いた。傷跡を見たんだ。ほんとにあったんだよ……稲妻のようなのが」
フレッドが額を指さす。
ハリーの額に稲妻のような傷跡があり、それがハリーだと証明している。
「かわいそうな子……どうりで一人だったんだわ。どうしてかしらって思ったのよ。どうやってプラットホームに行くのかって聞いた時、本当にお行儀がよかった。アリアネ、あの子と話したの?あなたとあの子は……」
「もちろん話したよ。ハグリッドから私の話、聞いてたみたいで私の事知っててくれたの」
ハグリッドこと、ルビウス・ハグリッド。
彼はホグワーツで鍵と森の番人をしていて、私の死んだ両親やハリーのご両親と旧知の仲。
私にも良くしてくれたりしている人なのだ。
するとフレッドは、違うことに興味があるみたい。
私の両肩に手を起きながら身体を乗り出し、モリーおばさんに話かける。
「そんなことはどうでもいいよ。『例のあの人』どんなだったか覚えてると思う?」
その言葉に、モリーおばさんの目が鋭くなった。
「フレッド、聞いたりしてはだめよ、絶対にいけません。入学の最初の日にそのことを思い出させるなんて、かわいそうでしょう。それに、アリアネの前でそれを言ってはいけません」
「……モリーおばさん、私は大丈夫よ」
「大丈夫だよ。そんなにムキにならないでよ。それとごめんよ、アリアネ」
謝罪をしながら、フレッドが頭を軽く撫でてくる。
彼はたまに気遣いの出来ない事を言うけれども、こうしてちゃんと謝ってくる。
「大丈夫よ、気にしてないから」
そんな風に話していれば、汽車が出発する笛が鳴った。