第1章 ホグワーツ魔法魔術学校【賢者の石】
「母さん、あんまり長くはいられないよ。僕、前の方なんだ。Pバッジの監督生はコンパートメント2つ、指定席になってるんだ……」
「おお、パーシー、君、監督生になったのかい?」
双子の一人が、わざとらしく驚いたように言うとパーシーが睨む。
「そう言ってくれればいいのに。知らなかったじゃないか」
「まてよ、そういえば、なんか以前に1回、そんなことを言ってたな」
「2回かな……」
「1分間に1、2回かな……」
「夏中言っていたような……」
にやにやと笑みを浮かべたフレッドとジョージは、わざとらしくそう話し合う。
そんな彼らにため息を吐いていれば、パーシーが流石に苛立ったように二人を睨みつけた。
「だまれ」
「ああ、そういえば、どうしてパーシーは新しい洋服着てるんだろう?」
「監督生だからよ」
モリーおばさんはパーシーが監督生になったことが本当に嬉しそうで、そして誇らしげ。
「さあ、みんな。楽しく過ごしなさいね。着いたらフクロウ便をちょうだいね」
モリーおばさんはパーシーの頬にさよならのキスをすれば、パーシーは少し照れたように頬を赤く染めてから行ってしまった。
そして次にモリーおばさんは双子に向き直り、困ったように眉を寄せる。
問題児の双子。
よく家に、双子が問題を起こしたという手紙がしょっちゅう来ていたのを思い出す。
「さて、あなたたち……今年はお行儀よくするんですよ。もしも、またふくろう便が来て、あなたたちが……あなたたちがトイレを吹き飛ばしたとか何とかいったら……」
「トイレを吹っ飛ばすだって?僕たちそんなことしたことないよ」
「すげえアイデアだぜ。ママ、ありがとさん」
「バカなこと言わないで。ロンとアリアネの面倒見てあげてね」
「心配御無用。はなたれロニー坊やとうちのアリアネお姫様は僕たちにまかせて」
さりげなくウインクする双子に、私は呆れ顔。
ロンは顔を不機嫌そうに歪ませながら、双子たちを睨みつける。
「うるさい」
「双子に面倒見られるんじゃなくて、私が面倒見ることになりそうね」
肩を竦めながら言うと、双子は『そうかもしれない!』と笑っていた。
すると双子たちは思い出したように、モリーおばさんに声をかける。
「ねえ、ママ。誰に会ったと思う?いま列車の中で会った人、だーれだ?」