第16章 闇の印【炎のゴブレット】
とりあえずと、ネグリジェの上からコートを羽織って外に出ると、とんでもない光景が広がっていた。
テントが燃えているのだ。
「テントが燃えてる!?」
周りのテントが燃えていて、潰されて倒されている。
そしてよく目を凝らして見れば、謎の仮面を付けた魔法使い達の軍団が行進していた。
しかもそれだけじゃない。
魔法使い達が頭上で杖を上げて、何かを操っているのだ。
操っているのは人間、それもキャンプ場の管理人のロバーツさん。
「なんてこと……!」
あともう3人いる。
奥さんと子供たちのようで、1番小さなマグルらしに子供が首を左右にグラグラさせながら上空で回り始める。
「私らは魔法省の助太刀をする」
アーサーおじさんは杖を手にしていた。
ビル、チャーリー、パーシーも杖を手にしている。
「おまえたち、森へ入りなさい。ばらばらになるんじゃないぞ。片がついたら迎えに行くから!」
ビルとチャーリーにパーシーは既に迫り来る軍団に向かって駆け出していた。
アーサーおじさんも飛び出し、魔法省の役人達も飛び出していた。
「さあ、行くよ」
フレッドがジニーの手を掴み、森の方へと引っ張っていく。
私たちはそれに続いて森へと入ってから、全員で後ろを振り向いた。
ロバーツ一家の下にいる群衆が増えている。
魔法省の役人が必死になっているが、苦戦しているのが見えた。
「なんでこんなことになってるのよ……」
さっきまで和気あいあいと楽しんでいたのが嘘みたいだ。
子供たちが泣き喚く声、不安げに叫ぶ声、恐怖に慄く声が聞こえてくる。
そして森へと走ってくる人達や、動く人達で押されていればロンの痛そうな叫び声が聞こえた。
「どうしたの?」
「ロン?」
「ロン、どこなの?ああ、こんな馬鹿なことやってられないわ。ルーモス(光よ)!」
ハーマイオニーが杖に灯りを点して、細い小道を照らすとロンが地面に這いつくばっていた。
「ロン!何してるのよ」
「木の根に躓いた」
ロンが腹立たしげに言いながら立ち上がった時だ。
「まあ、そのデカ足じゃ、無理もない」
背後から気取った嫌な声が聞こえてきた。
慌てて振り向けば、すぐそばにマルフォイが1人で立っていたのだ。
木に背を預け、腕組みしながら平然とした様子でキャンプ場を見ている。