第15章 ワールドカップ【炎のゴブレット】
「クラムはいったい何のためにスニッチを捕ったんだ?」
ロンはぴょんぴょんと跳ねながら頭上で手を叩きながら叫んでいた。
「アイルランドが160点もリードしてる時に試合を終わらせるなんて、スケサク!」
「絶対に点差が縮められないってわかってたんだよ。アイルランドのチェイサーがうますぎたんだ……クラムは自分のやり方で終わらせたかったんだ。きっと……」
「あの人、とても勇敢だと思わない?」
ハーマイオニーはクラムの着地を見ようと身を乗り出していた。
興奮しているのか、顔は赤くなっていて、私はにやりと笑みを浮かべる。
「もしかして、クラムの勇敢さに惚れた?」
「な、何言ってるのよ!そんなんじゃないわ!」
私も身を乗り出して見ていれば、魔法医の大集団がレプラコーンとヴィーラを吹っ飛ばして道を作り、クラムに近づこうとしていた。
「メチャメチャ重症みたいだわ……」
「鼻、折れてるんじゃないかしら……」
様子を見ようと万眼鏡を取り出せば、彼は前に増してムッツリとした表情を浮かべながら、医師団の治療を撥ねつけている。
その周りではブルガリアの選手達がガックリと肩を下ろしていた。
アイルランドの選手たちはと言うと、レプラコーンが降らせる金貨のシャワーを浴びながら狂喜して踊っている。
「まあ、ヴぁれヴぁれは、勇敢に戦った」
訛った口調が聞こえて振り返れば、ブルガリアの魔法大臣が喋っていた。
すると魔法大臣が怒った。
「ちゃんと話せるんじゃないですか!それなのに、一日中わたしにパントマイムをやらせて!」
「いなぁ、ヴぉんとにおもしろかったです」
訛っているけれど、喋れているのか……。
そう思っていれば、バクマンの声が響いてきた。
「さて、アイルランド・チームのマスコットを両脇に、グラウンド一1周のウイニング飛行をしている間に、クィディッチ・ワールドカップ優勝杯が貴賓席ねと運び込まれます!」
突然、眩い白い光が差し込んできて目が眩んだ。
どうやら貴賓席の中がスタンドの全員に見えるように照明がついたらしい。
目を細めていれば、2人の魔法使いが息を切らながら巨大な金の優勝杯を運び入れていた。
大優勝杯は魔法大臣に手渡される。
「勇猛果敢な敗者に絶大な拍手を──ブルガリア!」