第15章 ワールドカップ【炎のゴブレット】
そして、人差し指を何度も空中に突き上げて、飛行体制を戻るように言っている。
2人がそれを拒否すると、モスタファーがホイッスルを2度強く吹いた。
「アイルランドにペナルティー2つ!」
バクマンの言葉に、ブルガリアの応援団が激しく怒っているのが見えた。
「はあ、ボルコフ、ボルチャノフは箒に乗った方がよいようです……よーし……乗りました……そして、トロイがクアッフルを手にしました」
試合は今まで見たことが無いぐらいに凶暴化していた。
両チームのビーターとも、情け容赦のない動きであり、見ていてハラハラしてしまう。
ボルコフ、ボルチャノフは棍棒をめちゃめちゃに振り回して、ブラッジャーに当たろうが選手に当たろうが見境なし。
そしてディミトロフがクアッフルを持ったモラン目掛けて体当して、彼女は危うく箒から落ちそうになっていた。
「反則だ!」
その瞬間、アイルランドの応援団が立ち上がって叫んだ。
「反則!」
「ディミトロフがモランを赤むけにしました。わざとぶつかるように飛びました。これはまたペナルティーを取らないといけません。よーし、ホイッスルです!」
レプラコーンが空中に舞い上がった。
今度は巨大な手の形になって、ヴィーラ二向かってピッチいっぱいに下品なサインをしたのだ。
するとヴィーラは怒り狂い、レプラコーンに向かって火の玉を投げつけ始めた。
「わぁお……あれがヴィーラの本当の姿なのかしら?」
私は万眼鏡でヴィーラを見てそう呟いた。
何せヴィーラは美しい姿じゃなくなり、顔は伸びて、鋭い獰猛な嘴をした鳥の頭となって、鱗に覆われた長い翼が飛びだしている。
「ほら、おまえたち、あれをよく見なさい!」
アーサーおじさんが、下の観客席から聞こえる大喧騒に負けないぐらいの声で叫んだ。
「だから、外見だけにつられてはだめなんだ!」
「全くもってその通りね」
魔法省の役人が、流石に双方のいざこざを見逃すことが出来ずに出てきた。
レプラコーンとヴィーラを引き離している間も、上空では試合が続行されている。
「レブスキー、ディミトロフ、モラン、トロイ、マレットらイワノバ、またモラン。モラン決めたぁ!」
試合はすぐに再開した。
次はレブスキーがクアッフルを手に持っていて、それからディミトロフに渡る。