第15章 ワールドカップ【炎のゴブレット】
「モスタファーがブルガリア子キーパーから反則を取りました。『コビング』です。過度な肘の使用です!」
どよめいている観衆に向かって、バクマンが解説をした。
そのお陰で何が反則なのか分かった。
「そして、よーし、アイルランドがペナルティ・スロー」
マレットが反則を受けた時に、レプラコーンが怒れるスズメバチの大群のようにキラキラと輝いて空中に浮いていたが、素早く集まって文字を描く。
『ハッ!ハッ!ハッ!』
まるで挑発するかのようなもの。
その挑発に乗ったのがヴィーラであり、怒りに髪を打ち振るわせて踊り始めた。
慌ててハリー達が耳栓をしたのに思わず笑った。
私とハーマイオニーは耳栓をしなくても平気なので、ピッチで起きている事に気がついてハーマイオニーと共に笑う。
「審判を見てよ!」
ハーマイオニーがハリーの指を耳から引き抜いてから、起きている事を見せた。
モスタファーが踊るヴィーラの真ん前に降りて、何ともおかしな仕草をしていたのだ。
腕の筋肉をモリモリさせてみたり、夢中で口髭を撫でていたりとしている。
「さーて、これは放っておけません。だれか、審判をひっぱたいてくれ!」
バクマンが可笑しそうに言うと、魔法医が耳栓をしながら大急ぎで駆けつけてきた。
そしてモスタファーのむこう脛を蹴り飛ばしたのである。
モスタファーはそのおかげで我に返ったようで、バツの悪そうな表情をしてヴィーラを怒鳴りつけていた。
ヴィーラは踊るのを辞めると、モスタファーに反抗的な態度を見せる。
「さあ、わたしの目に狂いがなければ、モスタファーはブルガリア・チームのマスコットを本気で退場させようとしているようであります!」
万眼鏡で見れば、モスタファーはヴィーラを未だに怒鳴りつけながら退場させようとしていた。
「さーて、こんなことは前代未聞……。ああ、これは面倒なことになりそうです……」
なりそうじゃなくて、実際なってしまっていた。
ブルガリアのビーター、ボルコフとボルチャノフがモスタファーの両脇を着地してから、身振り手振りてわレプラコーンを指さして激しく抗議している。
レプラコーンは上機嫌で『ヒー、ヒー、ヒー』という文字を描いている。
恐らくレプラコーンの挑発に抗議しているのだろうけれど、モスタファーは抗議に取り合わない。